夫より先に別居してしまうと離婚で不利になるか?
最終更新日 2022年12月13日
夫(妻)からのDVやモラハラに耐え切れなくなった場合、別居という選択肢が挙げられます。
また別居を検討される方の多くは、今後夫婦生活を続けることが難しいと考えられている方が多いため、離婚も選択肢として挙がっているかと思います。
しかし、離婚前に別居した場合、金銭や所有権、裁判の観点で不利になるのではないか、と考えられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、自分から先に別居してしまうと離婚で不利になるのかについてご説明します。
夫婦間の同居義務
日本では、民法第752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と明記されているため、同居をしなければならないという法律上の義務があります。
単身赴任や長期出張などといった場合は明確に別居の理由があるため同居義務に違反しているといえません。
しかし、離婚寸前の場合はどうなるのでしょうか?
夫婦関係が破綻している場合、双方の同意のうえで別居をする場合も同居義務違反にはなりません。
また、DVやモラハラなどの被害を受けている場合は相手の同意なく別居をしても同居義務違反にはなりません。
DVやモラハラなどは精神や命に関わるような暴力になりますので、物理的に距離を置いて身の安全を確保する必要があるためです。
別居を検討する際には、別居をしなければならない理由を明確にしましょう。
Q 夫と別居しようと思っています。こちらが先に家を出て、後でこちらが不利になりませんか?
夫との別居を検討する妻は、別居すると「悪意の遺棄」や夫婦の同居義務違反になり、離婚の交渉上不利な立場になるのではと考えがちです。
しかし、実際、妻が別居して離婚協議上不利になることはほとんどないといえます。
なぜなら、夫に何の落ち度もなく別居に至ることはほとんどなく、妻が別居したからといって妻だけに問題があるとされることはほとんどないからです。
ただ、夫に落ち度がないのに不倫した女性が不倫相手と暮らすために夫や子を顧みずに家を出るなど、妻に落ち度が大きい場合は別でしょう。
別居の際の手続き
まず、別居前にすべきことがあります。
そのうえで、今後現在住んでいる自宅に戻る予定がない、離婚を前提の別居の場合は下記の手続きを行う必要があります。
住民票の異動
まずは市区町村の役所に行き、転出証明書を発行してもらいましょう。
引越後に引越先の役所で転入届を提出して住民票を移します。
注意点として、DVやモラハラ加害者に引っ越し先の住所を知られてしまう場合があります。
ただ、支援措置を受けることで、加害者に引越先を知られるのをかなりの程度防ぐことができます。
支援措置とは
DVやストーカー行為等の被害者を保護するため、これらの行為の加害者が被害者の住所を探索することを目的として住民票の写しや戸籍の附票の写しを取得することを制限することができる制度どのことです。
具体的には、最寄りの警察署等にDV被害等を相談し、支援措置申出書に意見の記載をしてもらったうえで、新しい住所のある市区町村に支援措置の申し出をします。
郵便物の転送
郵便物の転送届を出さない限り、以前住んでいた住所に郵便物が届きます。
そのため、加害者に見られたくない書類などを勝手に見られてしまう可能性があります。
引っ越し先の住所が決まったタイミングで転送届を提出しましょう。
今では郵便局のほか、インターネット上でも転送届を出すことができるので、相手がいないタイミングで処理しましょう。
児童手当の受取人変更
もしもお子さんがいて、児童手当の受取人がDVやモラハラ加害者だった場合、住民票の異動などと同時に児童手当の受取人の変更を行いましょう。
おわりに
今回は離婚を前提とし、自分から先に別居してしまうと不利になるのかについてご説明しました。
前提として、基本的には夫婦間の同居義務が法律で定められているため、理由がない別居は認められていません。
しかし、相手からDVやモラハラを受けているなど明確な理由がある場合は別で、そのようなケースでは離婚で不利になる可能性は低いです。
別居を行うことは引っ越しを行うことになるので、住民票の書き換えや郵便物の転送、児童手当の受取人変更など各事務処理を行う必要があります。
少しでも早く自分の時間を取り戻したい、健康的な生活を送りたいと考えている方は、一度当事務所にご相談ください。